大学ヒルクライム選手権2006年10月28日 06:58

タイムトライアルレース中のbudori
BUSA(The British Universities Sports Association) ヒルクライムTTに参加するため、ピークディストリクトにあるCuburと言う街へ出かける。片道、約130マイルの道のりである。事前にできる限りの情報を集めたが、コースも現地に行かなければわからないので、朝、8時に家を出る、つもりだったがいつも通り8時半の出発。M40-A43-M1と高速を走り、11時半に目的地のCuburに到着。山(というよりもイギリスにしてはちょっと高めの丘)の合間の小さな街である。OUCC(オックスフォード大サイクリング部)のメンバーはまだ誰も到着していないが、Leeds大のメンバーは5人くらいが一列に並んでローラー台でウォーミングアップをしていて、やる気満々である。まずは案内の文章に書いてあった通りにコースを車でたどってみる。いきなり15%の急勾配で始まり、それが300mほど続き、一旦緩斜面になった後、徐々に勾配がきつくなりながら、頂上付近でもう一度12%になるコース。全長1756ヤード。日本でヒルクライムレースというと、1-2時間走り続け、総距離10-20km、標高差も1000mを超えるが、ここではたったの1.7km弱。標高差にして100-200メートルで、7分程度で終わるタイムトライアルである。イギリスには高い山がないので、ヒルクライムというと、このように短距離の急斜面をダッシュで登るレースのことなのである。
 一旦コースを下り、車を停めて、ウォーミングアップに出かける。坂の勾配のきつさがどのような順序でくるのかを確認する。登ってみるとかなりきつい坂だ。いわゆるクライマーよりも、パワーのある体格の大きな選手の方が有利なコースだ。駐車場にOUCCのキャップをかぶった選手がいるので話しかけると、Ian Shapiroという卒業生で、今はマンチェスターにいるとのこと。OBとして参加らしい。
 Bridge Innというパブがheadquaterで、ここで出走サインをしてゼッケン32をもらう。13時からひとりずつ1分おきのスタートで、Budoriは32番目である。応援をしてくれるNaとYuは歩いてコースを登り始める。その間Budoriは付近のコースでウォーミングアップ。ひとつ前の選手と軽く挨拶をする。Durham大(ダーラム大 スコットランドの名門大)の学生で、体格からしてパワーはありそうだが、いわゆるヒルクライムにはあまり向いていなさそうだ。選手はペダルを固定した状態で、係の人が自転車を固定してくれ、時間になると一人一人スタートする。Budoriはあまり緊張もせず、スタート。横で誰かがGoGo!と応援してくれる。最初の15%坂は若干パワーを抑え気味にして、ダンシングを多用して登る。勾配が緩やかになるところで、係の人が通過をチェックする。登山者が多く歩いているが、みな声をかけて応援してくれる。シッティングで呼吸を整えながら走るが、どうにも苦しい。パワー計を見ると340Wで走っている。これは明らかにBudoriにとってはオーバーペースである。ベストタイムを出すため、と言い聞かせながら若干パワーを抑えて、再び勾配がきつくなるところに差し掛かる。ここではもうパワー計を見る余裕はなく、たまらずダンシングを繰り返す。前方にNaとYuが見え、Yuが”daddy,Daddy!”とユニオンジャックの旗を振りながら応援しているのが見える。Na達に応えたいところだが、もうその余裕がない。せめて蛇行しないように、ハンドルを押さえて、身体を固定して走る。最後の坂はホントにきつかった。前方にひとつ前にスタートした選手の背中が見える。よーしやったるぞ!、と思うが、だんだん視界も狭くなり、激しくなる呼吸音だけが聞こえ、頭は真っ白。最後はダッシュする余裕もなく、ゴール。呼吸が収まる様ゆっくり走っていると、前の選手が芝生に座っていて、”Well Done”と声をかけてきた。“君はオックスフォード大だね?”と話しかけてきたので、しばらく話をする。Durham大(ダーラム大)のドクターの学生で、SOXの吸収について研究しているとのこと。”それって化学工学だよ”、と少し研究の話をして、Budoriも化工の研究者で、今は生理学の分野のテーマについて研究している話をする。
 坂を下り、Na達と合流。70番のオックスフォード大の選手が通過するのを見て、ゴール地点まで坂を下り始めた。着替えをして、スタート地点まで行くと、ちょうどIanとキャプテンのWillがスタートするところだった。Willは、ホイールがきっちり固定されていなくて、スタート後すぐに停車して車輪調整。再び走り始めるが、再度不調で修正。1分後にスタートするひとつ後ろの選手に抜かされてからようやくスタートできた。しかしほどなく坂を下りてきた。棄権のようだ。降ろされたのか、自分で降りたのかはわからないが(おそらく降りたのだと思う)、もし自分で降りたなら、ちょっとそれはガッツが足りないな。
 後半にスタートする選手達はおそらくこれまでに実績のある選手達なのであろう。ライディングフォーム、身体の出来具合、スタート時の坂のスピードは明らかにこれまでの選手達とは違う。坂を降りてきたNa達と合流し、パブでゼッケンを返し、ビール半パイント券をもらって成績表をみる。Budoriは7min19sec。その時点での最速はオックスフォード大のMcgawの5min44sec。驚異的なタイムだ。
 運転するBudoriは残念ながらビールを飲めないので、コーヒーを飲み、帰りがけに、パブの隅でかたまっているオックスフォード大のメンバーに声をかけようとしたら、Ianが立ち上がってこちらにやってきて、話しかけてきた。初めてのミーティングに参加した時から気になっていたが、OUCCはちょっと閉鎖的な雰囲気がある。今回も、イギリスでのレース初参加のbudoriを知っているにもかかわらず、顔見知りでかたまっているのみである。日本の若者も似たような感じなので、きっとイギリスの若者も同じなのだろう。Ianは今年ドクターを卒業したばかりで、年齢も高く社会経験もあるので、気を遣ってこちらに話しかけてきたのだと思う
 気になるレースの結果は、112人中、56位。ちょうど中間だ。先頭から1-2割には入りたいなぁ、と思っていたのであまり満足ではないが、まあしかたない。

大学のクラブのサイトにも情報があります。
http://www.oucycling.co.uk/hc-results/busahc06.htm
悔しいけど、笑えます。

オックスフォード大サイクリング部2006年10月07日 07:02

オックスフォード大キャプテン
今日はOUCC(Oxford University Cycling Club)の新入生歓迎ライドが午後からあるので、午前中に買い物に行った。
買い物に行くと小学校の先生がいた。

集合場所であるTrinity Gateへ行くと、鍛え抜かれた猛者ばかりではないか?、と言う予想に反して、ポロシャツに通学車、ジムでトレーニングする様な出で立ちで、通学マウンテンバイクなど。学生ならではで、ほほえましい。自分も学生の頃はそうだった。こうしてみると、カッコだけはプロのbudoriは浮いて見える。
 一人OUCCのジャージを着た選手に話しかけると、Andreasと言う学生で、横浜の鶴見にいる友達のところに行った事があるので、日本のことは好きだという。早速BudoriのSRMに反応して「すごいの持ってるね」と言う。本人はCervelo SoloistカーボンにZIPPのカーボンホイールを前後につけ、カンパレコードフルセット。ざっと80万円はかかっている。最終的に40-50人くらいの学生が集まった。
 この初心者軍団を引き連れて、まずはオックスフォード市街のど真ん中を走り出すのだが、進路をふらふらしたり、車を自転車で囲んだりで、危険きわまりない。どう統率するかもオーガナイズされていないし、初心者を引き連れていきなりこれは日本では絶対ないな。とにかくケガだけしないように、車間をとってまわりをよく見ながら走る。道路に穴があいていたり、危険な箇所は前を走っている人が後ろの人に教えるように、と先輩学生が教えると、みんな細かくいちいち、指示を始める。対向車が来たら、Cars Up!と言うように言われたので、車線のある道路でも対向車線から車が来ると”Cars Up!”と言うところは微笑ましくもあるが、「車線のない道路では指示を出すように」というのがホントの目的なので、いちいち車が来るたびに言わなくてもいいのだが・・・
まとまりのつかない集団は、右だ、左だ、と叫びながらようやくオックスフォードまで帰ってきた。
 この後は、サマ-タウンハウスでお茶会である。サマータウンまで来たが、みんなまわりをきょろきょろしてどうも様子がおかしい。どうもお茶する場所を誰も知らないのである。Budorが、メール内容を一応地図で確認して、場所の目星はついている、と言うと「じゃあ君についていくよ
」と言う事になった。全く予備知識を頭に入れずやってくるイギリス人ぶりはやはりオックスフォード大の学生の中にも健在なのである。"Fresher"であるBudoriの先導により、一団はSummer Town Houseに到着。
ほどなく先輩達も到着し、会が始まるが、先輩達は積極的に後輩達に話しかける様子はなく、先輩同士でかたまっている。あまり感心しないが、日本でも若者は同じような傾向があるように思う。イギリスの若者も同じなのかな。

Tour of Britain-カンタベリー2006年09月02日 00:46

スタート前の世界チャンピオン ボーネン
今日はTour of Britainを観戦しに、Doverに近いRochester(ロチェスター)とCanterbury(カンタベリー)へ行く。まずはスタート地点のロチェスターへ向かう。朝7時に家を出て、高速を走り、テムズ川の河口近くににかかるQueen Elizabeth Bridgeを超え、約2時間で到着。スタート地点であるRochester Castleにはすでにチームカーが到着しており、Phonakチームのアクセル・メルクスにYuが声をかけると手を振ってくれた。Quick Stepチームの車には世界チャンピオンのトム・ブーネンの姿が見える。イギリスで自転車レースはベルギーやフランスほど人気はない。フランスやベルギーでは一般の観客とはバリケードで仕切られて、選手にはなかなか近づけないが、ウソのように選手の傍まで近づける。選手や自転車をながめる。Britishチームは全員がSRMのパワーメータを使っている。Phonakチームは、PowerTapのコンピュータのみを取り付けていた。今日はハブは使っていない。
 レーススタート30分前で、かぶりつきのポジションでスタートを見る事ができた。オランダ、ベルギー、フランスでは2時間前に行かないとこのポジションを押さえる事ができない。
出走サインに来る選手に声をかける。イゴール・アスタルロア(2003世界チャンピオン)、マチアス・ケスラー、トム・ブーネン(2005世界チャンピオン)、フィリッポ・ポッザート、カルステン・クローン、マイケル・ロジャース(2005TT世界チャンピオン)、が前を通り過ぎていく。野寺選手の所属するSkilチームの選手に声をかけ、”野寺選手は今日はどうした?”と聞くと“彼は今日はトレーニングだ”、”リタイアしたの?””そうなんだ。知り合いかい?野寺に伝えておくよ“。気さくな選手で、名前を伝えてくるよう頼んだ。
隣で一緒に見ていた老夫婦は、選手のことは全く知らないようで、僕の説明を聞きながら笑っていた。世界チャンピオンのブーネンが前を通った時に興奮しながら「この選手は世界チャンピオンで、あの虹色のジャージはチャンピオンだけが着られるんだ」と言うと、「世界チャンピオンね。そう言われれば、どれほどすごい選手かわかるわ」と笑った。2003年の世界チャンピオンのスペイン人、アスタルロアも声をかけるとなぜか”Ciao”とイタリア語で答えた。

10時半にレースはスタート。Rochesterの旧ドックヤード(史跡)をまわり、RochesterCastleの前をもう一度通過する。Castleの城壁の見張り窓から選手達を待っている間、隣で見ていた女性二人と話を始める。一人はマスコミのリポーターでもう一人は老婦人。二人ともレースが大好きで、Rochesterと日本との接点についても教えてくれた。徳川家康の相談役となったウイリアム・アダムス(三浦按針)の出身地がこのすぐ近くのジリンガムが出身だとのこと。また今日のゴール地点のカンタベリーにもついても教えてくれた。出身大学がカンタベリーで、街には特別の思い入れがあると言っていた。選手達が通り過ぎると、スコットランドのバグパイプ楽団が演奏をしながら街を歩き始める。ベルギーでもフランスでも自転車レースがやってくる街は、お祭りになっていたが、それはイギリスでも同じで、レースが通り過ぎると街ではお祭りが始まった。
街の女の子達のダンスグループ、バトンチーム、中国人の獅子舞と街は大いににぎわっていた。Yuは「なんだか、なごやかな街だねぇ」、「それを言うなら、にぎやか、だよ」。
ちょっと街の中を歩き、車に乗り今度はゴール地点のカンタベリーへ。距離は約35マイル(51キロ)。30分ほどで走り、高速をおりると、もうすぐにゴール地点である。
カンタベリーは世界遺産であるカンタベリー大聖堂で有名な街。大聖堂の近くの駐車場に車を止め、ゴール地点までの約1kmを歩く。ゴール地点は、イベントや、自転車店の出店が出ていてにぎわっている。SRMのパワーメーター体験コーナーがあり、イギリスではパワーメータがかなり身近なトレーニング機器である事を伺わせる。ジャイアント社のブースでピラー一体型のフルカーボンのTCRの完成車を持たせてもらったが、驚きの軽さだった。これほど軽い自転車は初めてである。Budoriのアマンダはこれに比べると、オール鉄製自転車である。いくら剛性第一と言っても、この軽さが強力な武器である事は間違いない。この軽さにはすっかり虜になってしまった。
ArmyCyclingチーム(イギリス陸軍の自転車チーム)もブースを出しており、イギリス軍の活動をアピールしていた。こちらではイギリス軍が一般へのアピールのためのデモ活動が多い。リクルートも兼ねているのだが、戦車シミュレーターで敵戦車を破壊するゲームを子供にさせるのである。これもどうかとは思うが、自転車チームとして活動を紹介しているのなら、まだ穏やかでいい。
ひととりブースを見終わり、レース観戦場所の確保のため、コースへ向かう。ゴール前100mの
地点に場所を確保する。よりよく観戦できる位置確保のために、隙あらば間に割り込んでくるフランスやベルギーと違い、場所確保の競争は殆どなく、余裕を持ってレース観戦ができた。
強風とコース間違いがあり、予定より約1時間遅れて選手達がやってきた。T
モバイルのイギリス人選手マーク・キャベンディッシュが先行を始めたが、クイックステップのフランチェスコ・キキ選手がギリギリのタイミングでさした。キキがステージ優勝。世界チャンピオンのブーネンは、CSCのヤコブ・ピールと話をしながらゆっくり遅れてゴール。このレースは9/24の世界選手権のための調整なのかもしれない。表彰台もすぐ近くで見る事ができた。オックスフォードの家から日帰りで、レース観戦ができ、しかも余裕を持って見る事ができ、充実の一日だった。明日は最終ステージのロンドン。コースは、ビッグベン、タワーブリッジ(船を通すために橋が上がる有名な橋)、バッキンガム宮殿も通過する。あの大都市の中心部を選手達が走り抜け、大観衆で通りが埋まる事を想像すると、ワクワクする。

木製自転車2006年06月03日 19:40

木製自転車
ブロードウェイタワーへ行った際に、National Trustの史跡のひとつであるManor houseに寄った。ここで、地元のクラシック自転車クラブが珍しい自転車を多く展示していた。その中でも特に驚いたのは、木製自転車である。60年前にイタリアで製作されたものだそうだが、外見は最新のカーボンモノコック製とほぼ同じである。ハンドルはライトが一体となっており、フォークとリムまで木製である。フレームはどの程度の固さか?、とオーナーのおじいさんに聞くと、ハンガーにぐいと力を入れて見せてくれた。フレーム全体が大きくしなり、かなりソフトなフレームのようである。持ってみるとそれほど重くない。今ではこんな手の込んだモノは作れないだろうが、アイディア、作成方法、ともにおもしろい自転車であった。

Benと練習2006年05月13日 06:14

午後はBenと自転車の練習の約束をしている。寒くもないけど暖かくもないので、長いグラブ、長袖ジャージ、ベストを着て出かける。天気予報では雨が降るらしいので、secondバイクのLemondで出かけた。Botley road沿いのマクドナルド前で待ち合わせをする。赤いSpecializedのE5に乗ってBenが時刻通りに現れた。カーボンパーツをたくさん使っており、またエアロホイールなので、かっこいい。Benの体格は後ろから見ているとランス・アームストロングそっくりである。車の少ないオックスフォードの南西部を走るとの事。菜の花畑が続く丘の道を走り続けたのだが、途中にはMansion(豪邸)もあり、自転車の事をあれこれ話しながら約2時間走った。